「七代目三遊亭圓生」襲名問題ですが、また動きがあったようです。
昭和54年に79歳で死去した古典落語の名人、三遊亭円生(6代目)の名跡襲名をめぐって、弟子や孫弟子が名乗りを上げていた問題で、新たに直弟子の三遊亭円窓(えんそう)(69)が襲名の意志を示して いることが17日、分かった。
円窓が所属する落語協会(鈴々舎馬風会長)によると、円窓は10日ほど前に協会に襲名に前向きな態度を口頭で報告。17日に開かれた定例理事会で自ら経緯を説明し、第三者から襲名を促されて6代目円生の遺族との話し合いを行っている ことを明らかにした。
「円生」は落語界でも由緒ある名跡の代表格。6代目円生の死後、長く空席になっていたが、最近になって弟子の三遊亭円丈(えんじょう)(65)と、弟子の5代目円楽の弟子で孫弟子に当たる三遊亭鳳楽(ほうらく)(63)が名乗りを上げた。今年3月には“直接対決”による落語会が開かれ話題を呼んだが、「結論」は出ていない。
新たに手を挙げた円窓は円丈の兄弟子に当たり、総領弟子だった5代目円楽亡き後は最も入門が古い。古典落語から創作落語まで幅広く手がけ、テレビ番組の「笑点」にも 長くレギュラーとして出演した。
円窓は産経新聞の取材に「調整中です。時期がきたらお話しできると思う」とコメント。落語協会では、「一門と遺族との問題」と静観しているが、「そう遠からずに(円窓の襲名で)正式発表を行う可能性がある」とする。
一方、協会の監事でもある円丈は「私も協会の幹部のひとりだ が、こうなったら成り行きを見守るしかない」と話している。(産経新聞 )
う~ん、いよいよ名乗りを上げましたか。そう来なくっちゃ!ブログでイチャモンをつけているだけなら中途半端です。先代の関係者だけでなく、落語ファンも納得できる形でケリをつけるべきなんです。
これまでの経緯を考えると、直弟子の圓窓、圓丈の両氏は、もともと「止め名」のままでいいと思っていたんですよね。そもそも総領弟子の圓楽(5代目)氏に継がせず「止め名」とした背景などを考えれば、それが良かったのかもしれません。
しかし、圓楽(5代目)氏が自身の弟子鳳楽に襲名させたいと言ったまま急逝してしまったから、話はさらに複雑化したわけで・・・。
さらに、鳳楽氏自身がその遺志を継ぎ、一方的に話を進めていったことから、自らも襲名に名乗りを上げたということですね。
こうなってくると、先代の遺族が出てこなければ誰もがスッキリする形にはならないでしょう。
まぁ、先代の弟子としては総領弟子圓楽(5代目)氏に次ぐ二番弟子となる圓窓氏は、古典から創作まで幅広い実績を持ち、とくに古典分野では五百噺を達成した実績もあるという点で、創作中心の圓丈氏、古典一筋の鳳楽氏よりは一日の長があると言ってもいいと思います。
もっとも、圓丈氏が名乗りを上げたのは鳳楽氏の一方的な襲名話を止めるためですし、圓窓氏が名乗りを上げたことで、支持に回ることは間違いないでしょう。はてさて、どういうオチでまとめてくれますやら。目が離せません。
5月25日 追記
毎日新聞に、経緯と解説がありました。
◇明確な規則なく、混乱続く
落語界の大名跡「三遊亭円生」の七代目襲名を巡り、一門から弟子と孫弟子の計3人の名前が浮上し、混乱が起きている。来年は六代目円生の三十三回忌。「昭和の名人」は、どんな思いで天国から見守っているのか。【濱田元子】
「円生」は三遊亭の一番大きな名前。六代目(1900~1979年)は持ちネタ数の多さ、完成度の高さを誇り、八代目桂文楽(1892~1971年)、五代目古今亭志ん生(1890~1973年)と並び称される。
◇死後「止め名」に
円生の死後、名跡は夫人の意向などで誰にも継がせない「止め名」とされていた。ところが、円生の筆頭弟子で、昨年10月に亡くなった五代目三遊亭円楽さんらの指名で、筆頭弟子、鳳楽さん(63)が七代目襲名に昨年秋、名乗りを上げた。
これに異議を唱えたのが先代円楽さんの弟弟子の三遊亭円丈さん(65)。「直弟子が継ぐのが筋」などと反発。今年3月には東京・浅草で2人による 「円生争奪杯」と銘打った落語会をしゃれで開催。それぞれが円生のおはこで勝負して話題を呼んだ。
◇協会側は静観
さらに5月に入って、円丈さんの兄弟子で、先代円楽さんの弟弟子、三遊亭円窓さん(69)が、5月17日の落語協会(鈴々舎馬風会長)の理事会で、「遺族から襲名を促された」と意欲を見せた。協会側は「一門と遺族で解決してほしい」と静観の構えだ。
事態が複雑なのは、円生一門のこれまでの事情も背景にある。
六代目円生は78年、真打ち大量昇進を打ち出した落語協会に反発し、弟子とともに脱会。落語三遊協会を創設したが、その結果、寄席に出られなくなった。ところが翌79年に円生が急逝すると、円楽一門を除く弟子は落語協会に復帰。そのため同じ円生一門でも、円窓さん、円丈さんは協会復帰組、鳳楽さんは円楽一門と所属が分かれている。
さらに、世襲が一般的な歌舞伎とは異なり、落語界には襲名の明確な規則はないという。一般的に故人の場合は、遺族の意見が重要視され、襲名話は遺族と所属協会、寄席の席亭(責任者)らがそろって推薦することで具体化する。
東西落語界を見ても、大名跡の襲名ケースはさまざまだ。当代の円楽さんのように師匠が生前に指名したり、林家三平さんや桂春蝶さんのように二世の場合は、すんなりと決まりやすい。
一方、上方落語界の大名跡「笑福亭松鶴」のように、六代目松鶴(1918~1986年)の死後、筆頭弟子の仁鶴さんの襲名辞退などで「凍結」されている例もある。
迷走する今回の襲名問題。鳳楽さん側は「周りががたがたやっているだけ。しゃべることはありません」。一方、円丈さんは「円生がどう考えるかという視点が抜けている。フェアな形で選ばれなければ」と現状に疑問を呈する。
◇「しこり残る」
関係者によると、事実上は鳳楽さんと円窓さんの2人の争いとの見方が大勢。演芸コラムニストの渡辺寧久さんは「名前は落語界の共通の財産。家の名前のように止め名にしたことからボタンの掛け違いが起きた。誰が襲名してもしこりが残るのでは」と憂慮する。
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